小石の独り言

日々の暮らしを大切に過ごしたい

不思議な食器屋 【創作物語】

 

 

こんにちは                   

以前書店員をしていました           

時々短いお話書いています

 

 

      不思議な食器屋

 

ここは食器屋です

私はここの店主です

ここの食器達には不思議な力があるのです

 

朝から雨が降っています

窓から見える街は静かで

久しぶりの雨音は

なんだか落ち着いて心地良い

 

その雨音と重なるように

「カラン カラン」

とドアベルの音が鳴り

扉が開くと

冷たい風と一緒に

綺麗なオレンジ色の傘の

小さなお客様が入ってきました

 

その黒髪の少女は緊張しているのか

入り口で立ったままです

 

店の奥からはカタカタと揺れる

食器の音が聞こえてきます

 

もちろんこれは

私にしか聞こえません

 

 (珍しい 食器の方から望むなんて)

 

たいていは

お客様が食器を選びます

でもたまにあるのです

食器がお客様を選ぶ事が

 

「いらっしゃいませ」

 

と声をかけると少女が私に気づきます

髪色と同じ黒い瞳

真っ直ぐで力のある強い願いがある瞳です

 

少女は私の目を見て

「姉さまへの贈り物を探しているの」

と言いました

そして

病気になってから外を歩く事もできず

笑わなくなってしまった姉に

少しでも食事をしてほしい

元気になってほしいと願っていると

 

私は奥の棚で

カタカタと身体を揺らしている

オレンジ色のカップを取り

少女の手に渡しました

 

すると

さっきまで騒がしかったカップ

すっかり大人しくなりました

 

 (よほどこの娘を気に入ったのね)

 

少女はカップを見つめ

両手でしっかり握りながら

「これにします」

と嬉しそうに言いました

 

 

それから数日後

今日は

朝から天気が良くて

街は人通りも多く賑やかです

 

窓ガラスを拭いていると

通りの向こうに

雨の日の少女の姿が見えます

隣には少女と同じ黒髪の女性がいて

とても楽しそう

女性は顔色が良く元気に歩いてきます

二人は話しながら時折笑い

店の前を通り過ぎていきました

 

掃除も終わり

私は椅子に座ってお茶を飲みます

食器達も満足そう

 

さあ

今日はどの食器が売れるかしら

 

 

 

 

 

百均のレターセット

アニメ「ヴァイオレット・エヴァーガーデン

が好きです

最近は書くこともあまりないけど

手紙っていいなと思います