小石の独り言

日々の暮らしを大切に過ごしたい

不思議な食器屋 【創作物語】

 

 

こんにちは           

以前書店員をしていました          時々短いお話書いています

 

       不思議な食器屋

 

「そんなに年が気になるのか」

男性は聞きます

「それは女性からすればそうでしょう」

横にいる従者が答えます

 

男性は彼女と結婚したい

彼女は賢く自分の意思があり          

ずっと側にいて欲しい

それだけなのにと

 

納得できない男性が

「年なんて関係ないだろう」

と言うと従者は

「女性が年上という事を周りも彼女も

気にしているのですよ」

と返します

この従者を睨みながら話す男性は

次期にこの国を守る為に

後を継がなければならない王子です

今日は遠征から国に戻る途中で

この宿に泊まってます

 

王子は溜息をつきながら部屋を出ると

階段を降りていきます

眠れそうにないので何か飲もうかと

カウンターへ行くと

奥の席に座っている男性が目にとまりました

 

旅の途中のようなその男性は

髪が瞳を隠すように長く

顔がよく分からない

それでも綺麗な顔立ちだという事は

ここから見ても分かる

 

王子は前髪の奥の青く綺麗な瞳と目が合い

引き寄せられるように隣に座りました

 

男性は王子をしばらく見つめてから

「何か悩み事がおありですか?」

と声をかけます

 

王子は少し悩んでから

「私はこれまで父の言う通りにしてきましたが

今回だけは譲れない

でもきっと父は許してはくれない

どうしたらいいのか」

と答えます

そして初対面の彼に

こんな話しをしている自分に驚き

「あなたは不思議な人ですね」

と言うと

 

彼は優しく微笑み

「私は食器屋です

これは旅の途中で買い付けたグラスです

良ければ差し上げますので

ぜひこれでお父様とお酒でも飲まれると

いいでしょう」

と箱に入ったワイングラスを王子に

渡しました

 

いつもなら断る王子ですが

手に取ったグラスがとても美しく

ひと目で気に入ってしまいました

 

「願い事が叶うといいですね

では お休みなさい」

そう言うと男性は部屋に戻っていきました

 

翌朝

王子は彼の事が気になりましたが

すでに旅立っていたようで

会うことはできませんでした

 

 

 

ここは食器屋です

私はここの店主です

ここの食器達には不思議な力があるのですよ

 

今日は朝から曇り空です

店の掃除を終えて椅子に座り

雑誌を読みながらお茶を飲みます

普段は噂程度の記事など気にしないのですが

隣の国の王子が小さな国の姫と

結婚したという記事が目にとまりました

 

読み始めると食器達が囁き出します

その小さな国の姫は王子より十歳も年上で

よく国王が許したと皆が不思議がっている

そう書いてありました

 

私は青い瞳の彼の事を思い出しました

不思議な事が起きる時は

理由があるのです

それは

私達のような食器屋に出会えた時

 

窓から外を見ると

曇り空の向こうに青空が見えます

さあ

今日はどの食器が売れるかしら

 

 

ダルトンのアクアグラス

ガラスに厚みがあるので普段使いにも     

百合の紋章も可愛い