小石の独り言

日々の暮らしを大切に過ごしたい

空とぶふねのブランコ 【創作物語】

 

こんにちは。

以前、本が好きで書店員をしていました。

子供向けの物語を読むのも好きなのですが

自分で書くのも好きなのです。

短い創作物語です。

 

 

   【   空とぶふねのブランコ  】

 

あるところに、みずうみのある小さな町がありました。

みずうみのむこうには大きな町があり、ふねでにもつをはこんでいます。

ふなつきばでは、ふねをまっている男の子がいました。

男の子はふねが大すきで、いつもあそびにきています。

町の人たちのたいせつなふねですが、このふねには、こどもたちが知らないひみつがありました。

 

 

男の子は、今日も早おきをして朝ごはんを食べると、ふねにむかいます。

ふねの上には、子どもたちがあそべるように、ブランコやすべりだいがあるのです。

男の子はすべりたいが大すきです。もちろん、ふねがみずうみに出るときには、子どもたちはおろされてしまいます。

 

しばらくあそんでいると、お父さんがやってきました。

お父さんはふねではたらいています。

お父さんは男の子のあたまをなでると

「お母さんがさがしてたぞ。」

といって、ふねの中に入っていきました。

 

きょうは天気もよく、家にかえるとお母さんは、やくそうをつんでいました。

お母さんのつくるやくそうは、びょうきにとてもきくのです。

男の子は、お父さんとお母さんが大すきです。

 

ある夜のことです。

男の子がベッドに入ろうとしたとき、家のドアをたたくおとがしました。

かいだんからそっとのぞくと、お父さんがだれかとはなしをしています。

お父さんは、お母さんとはなしをしたあと いそいで出かけてしまいました。

お父さんはよるもしごとをしているようです。

男の子はいつもふしぎでした。

よるはふねは出ないのに。

 

きょうは天気がわるく、空には黒いくもがひろがっています。

お母さんはふあんそうに空を見ています。

男の子はお父さんがしんぱいになり、こっそり家をぬけだして、ふねにむかいました。

 

男の子がみずうみにつくと、ふねはしずかにうかんでいます。

夜に見るふねはいつもよりずっと大きく見えて、少しこわくなりました。

ふねにのってみると、おとなのすがたはなく、風でゆれるたび、ギーギーと音がひびきます。

 

するととつぜん、男の子のからだがふわっとうきました。

男の子はびっくりしてすべりだいにつかまりまります。

ふねがゆっくりとうごきだしたのです。

みずうみに大きななみがおこり、ふねがよこにゆれ、男の子はすべりだいにしがみつきました。

ブランコも大きくゆれています。

ゴゴゴゴーッと音がしたあと、ふねはゆっくりと、うかびあがり、みずうみからどんどんはなれていきます。

ふねは高くうかびながらすすんでいるのです。

男の子は、びっくりして声もでません。

ふねは風をうけてゆれています。

すべりだいにつかまりながら下を見ると、小さくなった町が見えます。

くらやみに家のあかりがとてもきれいです。

みずうみも見えます。

自分が鳥になったみたいです。

夜のそらをふねはすすみます。

だんだん風が強くなって、男の子のからだ

はとばされそうになり、大きくゆれている

ブランコにつかまりました。

ブランコが男の子をたすけてくれているようでした。

 

しばらくすると、風がやんで空が明るくなってきました。

ブランコにのりながら下を見ると、大きな町が見えます。

赤いやねがたくさんならんでいます。

ふねはゆっくりと町へおりていきます。

お父さんがふねの中から出てきました。

ブランコにのっている男の子をみて、びっくりしています。

 

男の子はお父さんのかおを見てなきそうになりました。

お父さんは手をひろげてまってくれています。

男の子はおもいきりブランコをゆらして

お父さんの手の中にとびこみました。

お父さんは男の子をだきしめながら、小さなこえで

「このふねのことはひみつだぞ。」

と男の子にいいました。

男の子は大きくうなずきました。

 

お父さんはかえりのふねで、この町で、お母さんのやくそうをまっているびょうきの子がいて、早くとどけてあげたかったんだとはなしてくれました。

かえりは天気もよく、ふねはいつものように、みずうみの上をゆっくりとすすんでいきます。

男の子は、今までよりもっとふねがすきになりました。

「このふねには、ぼくのしらないひみつがまだあるかもしれない。」

そうおもうとわくわくします。

 

ふなつきばではお母さんがしんぱいそうにふねのかえりをまっていました。

町につき、ふねをおりるとお母さんのすがたが見えます。

男の子は、はしりだすのでした。