小石の独り言

日々の暮らしを大切に過ごしたい

不思議な食器屋の物語 【創作物語】

 

 

こんにちは

 

       【 不思議な食器屋 】

私は食器屋です。

今日はお店で売る食器を探してある街に来ています。

天気もよく青い空が広がり、船を降りると街のあちこちに黄色のかわいい花が咲いています。

 

お店のお客様からこの街にめずらしい食器があると聞いてきたのですがなかなか見つかりません。

にぎやかな通りを抜け細い路地に入ります。ゆるい下り坂の左右にわかれる道で、どちらに進もうか迷っていると、後ろから

「なにかお探しですか?」

と男性に声をかけられました。

「めずらしい食器があると聞いて来たのですが見つからなくて」

と言うと

「ぼくが案内しましょう」

と答え歩きだしました。

私は後についていく事にしました。

せっかくここまで来たのですから。

坂道を進みしばらく歩くと、小さな店の前で立ち止まります。

とても小さな店だったので、思わず

「ここですか?」

と聞いてしまいましたが、男性は笑いながら言いました。

「ようこそ、ここがその店ですよ」

男性はこの店の店主だったのです。

店に入ると、見た事のない食器がたくさん並んでいます。

カップやグラス、お皿が私に話しかけて来るようです。

不思議な食器は、普通の食器の中にかくれているので、不思議な力がないと見つける事はできません。

ふと、かわいいお皿が目にとまりました。

私にはお皿の上で小さな花もようが、くるくるとまわって見えます。

思わず手に取ると

「あぁ、やっぱりあなたもですか」

と言いました。

私は改めて店主を見つめます。

額をかくすように長めの前髪の奥に、きれいな青い瞳。優しい声。

店主も私を見ています。

 

(この人も私とおなじなのね)

 

「このお皿を買いたいのですが」

と私が言うと、店主は少し考えてから

「そうですね。あなたにならおゆずりしましょう」

といい、ていねいに箱に詰め渡してくれました。

店主は

「また、来てくださいね」

とほほえみ

私も

「また来ますね」

と店主の青い瞳を見つめながら答えました。

 

店を出ると風が少し冷たくなっていました。

港に着くと、船を待っている人が並んでいます。

近くに行くと街の人のうわさ話が聞こえてきました。

西の方にある湖のむこうの小さな町から、夜中に船が飛んできたのを見た人がいるという話でした。

聞いていた人たちは笑いながら、大きな鳥とまちがえたのだろうとか、夢を見ていたのだろうとか、まるで信じていないようでした。

 

私はその小さな町に行ってみたくなりました。そんなステキな事がおこる町なら、不思議な食器もあるかもしれない。

 

船に乗り込み席に座ると、少し眠くなってきました。いい買い物ができたので、はやく帰ってこのお皿を店に並べたくなりました。